ビタミンDはがん罹病率を減少する?

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2つの最近の研究では、低レベルの血中ビタミンDとがん罹病率の増加との関連を示唆しています。私たちの専門家はそれらの背景にある科学について論じました。


2018年6月、高レベルの血中ビタミンDとがん罹病リスクの減少が関連しているかもしれないと提唱する、2つの論文が発表されました。一方は乳がんで、他方は大腸がんと直腸がんに対する研究です。

これらは過去20〜30年の間に発表された、ビタミンDとがんに関する多数の研究の中でも最近の研究です。いくつかの研究はがん予防を、その他はビタミンDががん告知後の経過を好転させるか否かについて調べています。所見は全体的にみても種々様々です。

私たちは Memorial Sloan Kettering のがん専門医で大腸がんのエキスパートでもある Leonard Saltz 医師と、乳がんのエキスパートである Monica N. Fornier 医師にこれらの研究について伺いました。“日光ビタミン”について私たちが何を理解すべきかということと、がんとの関連についてここに記します。

これらの最近の研究は何を示唆しているのか?

大腸がんの研究の方は、他の17の研究のデータを組み合わせ、合計して1,2000人以上を追跡し、the Journal of the National Cancer Institute に発表されました。その中で、血中ビタミンDが欠乏している人(20ng/ml以下)は、高レベルを維持している人(50 – 62.5ng/ml)に比べてがん罹病率が31%高いことがわかりました。

PLoS One に発表された乳がんの研究は、55歳以上の女性5,000人以上を対象に行われました。血中ビタミンDが高い女性(60ng/ml以上)は血中ビタミンDが低い女性(20ng/ml以下)と比較して、乳がん罹病率が80%低かったことを発見しています。また研究者は対象女性の中で、最も高いビタミンDレベルを保有しているグループが、最も低いがん罹病率を示したことを発見しています。

これらの研究の限界は?

Fornier 医師は「これらの発見には説得力がありますが、ライフスタイルとがんを関連付ける研究に対して私たちは十分慎重になる必要があります。何故なら、世の中にはありとあらゆる要因が存在しているため、2つの要因の直接の関連性(例えばここでいうがんとビタミンD)を見出すのは大変難しいのです」と述べています。

「一つの大きな注意点は、高いビタミンDレベルを持っているということはただ単に、より良いライフスタイルを送り、より健康的な食事を摂取しているということだけかもしれない。さらに、大腸がん手術後にビタミンDを服用すれば再発を防ぐことができるかどうかを調べている対照研究では、まだリンクが見つかっていないということに注意することも重要です。」と Saltz 医師は述べています。

また医師は高容量のビタミンD服用とがん予防には関連性がなく、その目的でビタミンDを使用するべきではないと結論づけている、2018年7月に JAMA Oncology に発表された別の研究についても言及しました。

ビタミンDの体内での役割は?

ビタミンDの最も重要な役割の一つは骨の健康を維持することです。ビタミンDは食物から腸へのカルシウムの吸収促進を補助しています。また、骨の形成や再生に必要な血中のカルシウム、リン酸塩のレベルを維持することも重要な役割です。

がんに対するビタミンの役割についてはまだあまり知られていませんが、それの持つ細胞の増殖や調節に関連する経路を調整するという機能が関係しているのかもしれません。「研究室で行ったいくつかの研究は、ビタミンDがある特定のがんを予防できる性質を有するかもしれないと述べていますが「それがどのように人々の利益につながるかへのつながりはかなり弱い」と Saltz 医師は述べています。

完全にその関係を理解するためには、専門家は無作為化比較試験を実施する必要があるでしょう。もしその関係性が確定できれば、ビタミンDの適正量や効果を得るに必要な服用期間を決定できるかもしれません。

ビタミンD欠乏症はより一般的になってきていますか?

アメリカの人口の40%以上、世界中で10億人以上の人がビタミンD欠乏症であることをいくつかの研究は示しています。Fornier 医師は、以前に比べて人々が屋外で過ごす機会が減っていることを示唆し「たくさんの人が皮膚がんを心配して日光を浴びるのを恐れています。もちろん注意することは大切ですが、早朝や夕方のそれ程強くない日光を少量浴びるのは決して悪いことではありません」と述べています。

食事も一役担っていて、多くの人がビタミンDの豊富な食事をとっていないかもしれません。特定の魚介類、卵はビタミンDが豊富で、牛乳、オレンジジュース、多くのシリアルの中にはビタミンDを添加しているものもあります。

Fornier 医師は特定の乳がん治療の副作用に対応するため、健康なビタミンDレベルを保持することが大変重要と述べています。乳がん治療法の一つのホルモン療法、特にアロマターゼ阻害薬と呼ばれる薬物は骨密度を減少させ、骨折を起こしやすくする可能性があります。

がんのリスクを減らすためにビタミンDのサプリメントを摂取したほうがいいのか?

「ただ薬局に行ってビタミンDのサプリメントを買うだけで、将来がんの心配をしなくて済むならとても素晴らしいが、もちろんそんなに簡単ではありません」と Saltz 医師は言います。

さらに医師は「現段階では、医学研究所 the Institute of Medicine(略称IOMは公共衛生と科学方針のために科学的根拠に基づいた研究と推奨を提供する機関)はがん予防としてのビタミンD摂取を推奨するには、科学的根拠が十分でないとしています。しかし、ビタミンDは骨の健康にとっては重要なので、ビタミンDが欠乏している人には摂取を推奨しています」と付け足しました。

なお、とても高いレベルのビタミンDは消化管や腎臓に不具合をもたらす可能性があります。

がんのリスクを減らすために他にできることは?

もし大腸がんのリスクを心配している場合、講じることができる沢山の方策があると Saltz 医師は述べています。「あまり精製されていない炭水化物や砂糖を選び、全粒穀物や野菜、魚介類を多く摂取するような健康的な食生活を送っている人は大腸がんのリスクが低いことがわかっています。また、ピーナッツ以外のナッツ類をたくさん摂取することは大腸がん手術後の再発率低下に関係しているというデータもあります。さらに、コーヒーの摂取と大腸がん罹病率低下の関連性も立証されています」

Fornier 医師は定期的な運動の重要性を強調しています。「私たちは運動が健康全般においてだけでなく、特に骨の健康や精神衛生においてますます重要であることを学んでいます。ビタミンサプリメントは健康的なライフスタイルの代用にはなり得ません」

この翻訳はボランティアが行ったものです。腑に落ちない点がありましたら下記の原文をお読みください。

原文:Memorial sloan kettering cancer center <www.mskcc.org> “Does Vitamin D Reduce the Risk of Getting Cancer?”