乳がん患者に起こる脱毛の防止と対策

乳がん患者に起こる脱毛の防止と対策

メモリアル・スローン・ケタリング(MSK)がんセンター 2018年5月16日

ドクター・マリオ・ラクテュール(Dr. Mario E. Lacouture)

内分泌療法中に脱毛症を発生した乳がんの女性にとって、局所ミノキシジル(育毛剤)が明らかな効果がありうることが我々の最近のリサーチによって示された。

JAMA皮膚病学(米国医師会オンライン医学誌、2018年4月)に掲載されたこの研究では、この脱毛症は男性ホルモン性の脱毛症、特に前頭部と頭頂部によく見られる局部的脱毛症に近似していることが認められた。規定撮影による写真を見ると、内分泌療法によって脱毛症を起こした女性の80パーセント(46人中37人)が、5パーセントの局部ミノキシジルで治療されると軽度から顕著な改善を示した。このリサーチはニューヨーク大学医学部とヴァイル・コーネル医学部と協力して行われた。

今までは、がんの患者やサバイバーが脱毛症によって経験する精神的な苦痛については注意が払われていなかった。この欠陥を是正するため、MSKの皮膚科と乳がん専門医は他のセンターの医師と協力して、「米国皮膚病学会誌」に最近2つの医学生涯教育記事を掲載されたが、顕著な頭髪の障害、潜在する病態機序、重症度評価法、患者によるQOL(生活の質)の評価法、治療対策、将来の治療研究を推進する機会などについて検討がなされた。

MSKにおける終局的な目的は、皮膚病の副作用をよりよく理解し、がん患者が今日十分な支持を受け、将来は予防療法の恩恵を受けることができるようにすることである。この最新臨床情報は脱毛症の頻度とその障害の全体像、現在の治療法の評価、そして現在行われている有望なリサーチの要点を提示している。

脱毛症の発生と副作用

がん患者の生存率が上昇するにつれて、継続的、あるいは永久的な頭髪の障害に悩まされるサバイバーの数が増えている。抗がん剤治療による脱毛症が最も一般的で、がんの治療を受ける65パーセントの患者に起こる。しかし脱毛症は放射線治療、標的がん療法、免疫療法、幹細胞移植、内分泌治療にも伴う。脱毛症の発生は療法によって異なり、頭部に放射線治療を受ける患者のほとんどに発生し、標的療法を受ける患者の15パーセント、そして免疫阻害剤治療患者の1~2パーセントに発生する。

がんの治療を受ける多数の人、特に女性にとっては脱毛症は最も不安をかきたてる副作用で、強い心理的苦痛を引き起こす。以前に出版された研究では、婦人科がん患者の17パーセントが治療中最もつらい副作用は脱毛だと言っており、30パーセントがそれによって極端に制限され、14パーセントまでが脱毛が起こるなら抗がん治療を拒否することを考慮すると言った。我々の最新の研究では、内分泌療法によって脱毛を経験した乳がん患者の女性の間では軽度の脱毛を経験しただけにもかかわらず、かなりの精神的な苦痛を報告しており、我々研究者を驚かせた。結論として、がん治療後の継続的、および永久的な脱毛症はうつ病、不安神経症、心理的苦痛の身体化などを引き起こすことが、他の研究者によっても確認されている。

脱毛の治療法

今日までの局所ミノキシジルの結果は希望が持てるが、決定的ではない。我々の最新の研究に

よれば、内分泌療法後の脱毛に対して、5パーセントの局所ミノキシジルで治療を受けた乳がん患者46人中37人に軽度から顕著な改善が見られた。別の研究、細胞毒性を有する抗がん剤治療を受けた乳がん患者22人の無作為化試験では2パーセントの局所ミノキシジルで治療されると、プラシーボ(偽薬)と比べて脱毛の期間を50日短縮することができた。このように、結果は有望であるが、局所ミノキシジルの十分な効能性を示し、その使用の普及を正当化するためには、もっと大勢の患者を対象にしたリサーチが必要である。

頭皮冷却は抗がん剤治療によって起こる脱毛を防止するために最も広く使われている方法である。この技術は51から67パーセントの患者の脱毛度2(50パーセント以上)の脱毛を防ぐことができることが研究で明らかにされている。この治療の作用は、冷却によって頭皮の血流が20パーセント減り、毛包が細胞毒性の摂取を抑えるためと考えられている。頭髪を維持する率は抗がん剤治療の投薬計画により異なるが、タキサンを処方されている患者が他より高い維持率を示している。残念ながら、抗がん剤治療によって発生する継続的脱毛を防ぐために頭皮冷却が効果的であるかについての長期にわたるデータはなく、放射線治療によって起こる脱毛を防ぐ効果は実証されていない。他の懸念は頭皮冷却システムには保険がきかないことである。患者はHair to StayCold Capital Fundから経済的援助を得ることができるかもしれない。抗がん療法により継続的および永久的な脱毛症を発生する可能性についての教育が必須で、それによってがん患者は生活の質をおびやかす副作用を最小限に食い止めることができる。

現行のリサーチ

抗がん剤治療および放射線治療によって発生する脱毛に対して、いくつかの発症前の介入治療が試みられたが、2、3だけが臨床的な効果を示した。我々は2017年の米国臨床腫瘍学会の年度会議で、抗がん剤による脱毛の防止に局所的カルシトリオール(BPM31543)を投与した研究の第一層治験の最終データを発表した。このデータはタキサンを主とした抗がん剤治療を受けている患者にBPM31543を日に2回投与したが、耐用性は良好で安全であり、最大耐用容量は検知できなかった。それぞれの容量レベルでの効果を記録した。韓国の研究者たちは局所的に植物混合液を使って、乳がんサバイバーにおいて抗がん剤治療による永久的脱毛を防止できるかどうかを検査中である。

乳腺医学サービスのシャーリ・ゴールドファーブ(Shari Goldfarb)と共に、我々の継続中のChance Study(A prospective, Longitudinal Study of Chemotherapy-Induced Hair Changes and Alopecia, Skin Aging and Nail Changes in Women with Non-Metastatic Breast Cancer:非転移性乳がん患者の女性に起こる抗がん剤治療による頭髪の変化と脱毛、皮膚の老化、爪の変化についての展望的な長期研究)は500人の乳がんサバイバーの抗がん剤治療および内分泌療法による継続的脱毛の発生、危険要因、心理社会的影響、遺伝子マーカー、臨床的特徴について調査している。この研究の目標達成日時は2018年8月である。この研究の調査結果は予防および副作用に対応する治療方法を識別するために決定的な洞察をもたらしてくれ、将来より多くの人々が恩恵を受けるものと期待している。同様な研究が他種のがん患者にも緊急になされるべきである。

メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターにおける皮膚科内の腫瘍皮膚病プログラムは多種の専門家が集まり、人々に治療前のカウンセリングと皮膚病の予防処置を提供している。このプログラムの目的はがん治療によって皮膚に起こる副作用の頻度と障害を最小限に食い止め、我々が治療する患者さんたちを皮膚病に関しては最高の生活の質を確保できるよう援助することである。

原文:https://www.mskcc.org/clinical-updates/preventing-and-managing-alopecia-breast-cancer-patients?utm_source=OncoNotes-5-17-18&utm_medium=email&utm_campaign=BreastCancer&utm_content=ClinicalResearch