免疫細胞なしでがん免疫療法を構築

研究チームは、試験管内で2つの幹細胞株を乳がん細胞を破壊する「合成T細胞」に入れ込む加工を行った。

for_theScientist-by-Ryo-Tachibana-640-300x212.jpg

デザイナー細胞がターゲット細胞を感知するイメージ図 

たちばな りょう作、東京大学薬学科卒業

By Abby Olena | November 13, 2017

免疫細胞ががん細胞を認識して死滅させる技術が、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞治療の鍵ですが、改変された免疫細胞は患者にとって問題を引き起こす可能性もある。

そのような合併症の1つであるサイトカイン放出症候群は、軽度な症状であれば発熱など、深刻な場合には免疫系の過剰反応により臓器の機能不全および死亡に至ることもある。 今日(11月13日)Nature Chemical Biologyに掲載された研究では、研究者は接触したがん細胞を殺す能力を持つ非免疫細胞を作り出すことに成功した。

この研究に関与していなかった英国のオックスフォード大学の生物学者サイモン・デイビス(Simon Davis)は、「これはスコープを今までの対象であったリンパ球そのものから超えて広げた初めての研究、細胞ベースの療法の新しい時代に入った」と The Scientistに電子メールで書いてる。

「著者らは受動的で非免疫性の細胞を接触に依存する乳がん細胞のキラーに変えることができることを示した」と彼は付け加えた。

人工T細胞を徐々に周辺の細胞(大部分はがん細胞)とともに死滅させるような展開にまでもっていきたい - Martin Fussenegger、 ETHチューリッヒ

典型的な免疫療法は、免疫系の力を利用する。 CAR T細胞療法では、例えば、患者は、がん細胞の表面上の特定のタンパク質を認識し、がんを破壊させるように改変された自身のT細胞の輸血を受ける。

「しかし、内在性の免疫系を使いこなすことによって、免疫細胞を新たにプログラムしてがんを死滅させると、いくつかの副作用が生じる可能性がある」とETHチューリッヒの共著者でバイオエンジニアのMartin Fussenegger氏は指摘する。

研究チームは、他のタイプの細胞を用いて同様の治療薬を開発するために、ヒト胚性腎臓細胞由来の共通細胞株であるHEK-293T細胞とヒト間葉系幹細胞の両方にがん検出センサーを組み込んだ。

センサーは2部、アンテナのように細胞から突出し内因性シグナル伝達経路を抑制する部分と同じシグナル伝達経路を2つの受容体から構成される片方の受容体の細い胞の表面上に特定のタンパク質を感知したときに活性化することができる部分からなる。

受容体が抗原を示すがん細胞と接触すると、この相互作用はすべてのアンテナを細胞の後ろに移動させるため、合成T細胞と標的細胞との間の直接の界面にアンテナは存在しない」とFussenegger氏は説明している。

この変化は、次々とドミノ倒しのような反応を引き起こすことになる、内因性のものもあれば、Fusseneggerらが細胞株に組み込んだものもあるが、最終的に薬物活性化酵素の放出をもたらす。

酵素は、その後近くの細胞に輸送され、プロドラッグ(投与されると生体による代謝作用を受けて活性代謝物(英語版)へと変化し、薬効を示す医薬品)の影響下で、薬を活性化させ、細胞を殺す。

4panel-310-300x297.jpg

HER2がHEK-293Tセンサー細胞とHEK細胞の相互作用を明示(左下、赤色)。 マゼンタ(左上)は、アンテナのようなタンパク質膜の局在を強調。 シアン(右上)は抗原認識タンパク質の局在を示す。このタンパク質は、細胞間界面に蓄積する。 3つの画像は右下のパネルに結合される。右下のパネルは3つの画像を統合したもの。 小島良之

「人工T細胞を徐々に周辺の細胞(大部分はがん細胞)とともに死滅させるような展開にまでもっていきたい」とFusseneggerは説明する。

"合成T細胞が仕事をするときは、認識した細胞を標的として殺し、さらに周囲にある他のすべての細胞を爆発させて取り除く。 これは非常にターゲットが絞られているが、局所的に効果がある。

「人間の細胞の挙動を工学的にプログラミングするという点では、これが最先端です。 これは細胞を再構築する為の我々の工具を増やすことになる」とウィスコンシン大学マディソン校の生物医学エンジニアKrishanu Sahaは言う。

今研究に参加しなかったMadison氏は 「この研究のすべての実験は実験室で試験管の中で実施されたもの、それが動物の体内でもうまく機能するかは、さらなる研究が必要」と付け加えた。

Fusseneggerも同意で、次のステップは、げっ歯類をモデルにシステムを移し試してみることで、そこで成功すれば、前臨床試験と臨床試験に移行することとした。 そして、特定の疾患を標的とするために組み立てることができる構成要素の柔軟性は、この戦略の強みであると彼は言います。 「ここでは乳がんを選んだが、別のがんや他のがん細胞でも試す必要がある」

「私の思い至る唯一の制限は、必要な[経路構成要素]を発現する非免疫細胞に依存していると言うことですが、これらは細胞株に「組み込む」ことが出来る可能性もあります。 「もう少し重要な問題は、免疫系の構造にあります。免疫細胞は非免疫細胞よりも腫瘍を探し出す可能性が高く、治療にどのように役立つかは少し不明ですが、合成生物学的には これはかなりきちんとしたものだ」

R. Kojima et al., “Nonimmune cells equipped with t-cell-receptor-like signaling for cancer cell ablation,”Nature Chemical Biology, doi:10.1038/nchembio.2498, 2017.

AddThis Sharing Buttons

**********************************************************************************

この文章で腑に落ちないところがありましたら、下記の原文をご参照ください。

https://mobile.the-scientist.com/article/50933/researchers-build-a-cancer-immunotherapy-without-immune-cells