男が乳がんになると、ピンクの世界に入る

オリヴァー・ボグラーは46歳の時、胸に疑わしいしこりを発見したが、その反応は男性としては典型的なものであった。3ヶ月から4ヶ月、もしくはそれ以上放っておいた。ボグラーは「この病気になるなんて本当に想像ができなかった。」と語っている。しかし、終に子供じみた考えをやめて医者に行くと、浸潤性乳がんという診断に至るには時間がかからなかった。

さてここで興味深いのは、ボグラーが、ヒューストンのテキサス大学MDアンダーソンがんセンター学務部副部長として、がん細胞を常に研究しているがん生物学者であるということだ。それにも拘らず、しこりを胸部組織の良性の腫れと判断してしまった。

彼には彼なりの理由があった。乳がんは男性には稀である。全乳がん事例のたった1パーセントが男性である。とはいえそれが意味するのは、毎年2600人の男性が乳がんと診断されるということである。

しかし男性は通常危機を感じないと、MDアンダーソンがんセンター腫瘍内科医シャロン・ジョルダーノは述べている。ジョルダーノ医師が言わく、「男性は自分に胸があるという意識がない。男性全てに剰余の胸部組織があることを気づいていない。」従って、ボグラーのようにステージの進んだ乳がんの男性患者がジョルダーノ医師に会いに来るのは、 典型的な女性患者の場合より 珍しくない。

おそらくこれが、乳がん診断後の男性の生存率が低い理由の一つと言えるだろう。「腫瘍外科紀要」に2012年に発表された研究によると、初期乳がんの男性の診断から5年後の生存率は、女性の83パーセントに比べると、74パーセントと低い。

そして男性は単に乳がんに掛かるだけでなく、BRCA12遺伝子変異も遺伝的に受け継いでいるので、リスクが更に高い。女性と同じように、子供には親の遺伝子変異の50パーセントが受け継がれる可能性がある。

男性が診断されると、治療方法は女性とほぼ同じで、手術で腫瘍を取り除き、抗がん剤、放射線、タモキシフェンのようなホルモン抑圧薬と続く。

ボグラーの場合もそうであったが、一つの大きな相違は全摘出手術を受けたことであった。ほとんどの女性が部分切除と放射線を選択するが、男性の場合この方法は選択肢に含まれていない。一般的に男性の腫瘍は大抵乳首のすぐ下にあり、そこには取り除ける胸部組織があまりないとジョルダーノ医師が言う。

女性と違ってほとんどの男性は再建手術をしない。男性患者は再建手術という選択肢があることを知らないことが多いからであろうとジョルダーノ医師は述べている。多くの男性患者は乳首の再建には興味があるかもしれなず、「水泳やバスケットボールでシャツを脱ぐ時に、手術痕がそこまで目立たない。」 とジョルダーノ医師は言う。

そして乳がんは女性によくある病気なので、男性乳がん患者は「性的不適合」と言った経験してしまう。ボグラーは自分の経験を自分のブログ「ピンクの世界に入る」に綴っている。乳がんクリニックはピンクで装飾されていることがよくあり、援助組織は女性用に作られている。生検の後に「ブラジャーの内側に置くように」と、指示の付いたピンクの花の形の氷枕を渡された男性患者を、ジョルダーノ医師は記憶している。

エドワード・スミスが4年前に診断された際、情報と精神的支援をインターネットで探した。最初試したいくつかのチャットルームは、男性と分かると「あからさまに意地悪になるわけではないが、その時の会話から相手が涙を隠し後ずさりする様子を感じた。」と語っている。

スミスはついに男性にも感じの良いウェブサイト「リヴィング・ビヨンド・キャンサー(乳がんを越えて生きる)」を見つけた。このグループの女性たちは、とてもスミスの助けとなり、情け深く、進んで会話してくれると語っている。職場で居心地の悪い思いをしていたスミスには大切な事であった。同僚のほとんどが男性乳がん患者に会ったことがなかったので、 皆ただただ仰天していたと言う。

上記のウェブサイトは最近、男性患者のためのガイドを公表し、スミスにはこれが特に訳にったったようだ。リヴィング・ビヨンド・キャンサーのディレクターであるジーン・サックスによると、医学情報は女性のものと大差はないが、経験は非常に違う。「これは男性には特に話しずらいことだ」と彼女は言う。上記のガイドはスミスを含んだ男性患者をリストアップしており、他の男性患者たちにも自分の経験を共有してもらいたいと、喜んで自らの経験を語っている。

もうひとつ重要なのは、BRACAの遺伝子検査で陽性と出た男性が、自分の子供に遺伝してしまう可能性があることを理解して欲しく、新たに診断された患者にはBRACAテストを受けるよう強く勧める要因にもなる とサックスは言う。

医師の間でさえ認識が欠如しているということは、男性の乳がんが救命治療となった場合に、女性とどう違うのかを判明させる為に使われる研究費用が少ない 、とジョルダーノ医師は言う。男性への治療は女性での臨床実験からの証拠に基づいている。現在ジョルダーノ医師は、男性の病気を生物学的によりよく理解し、最も効果的なホルモン治療を見つけるための研究に矛先を向けている。

(写真の下の説明文)

オリヴァー・ボグラーの胸部のマークは放射線治療に使われる目印。

写真は原文からご覧ください。

この英訳はボランティアの手で行われました。専門家の翻訳ではありませんので、腑に落ちない場合は下記の原文をお読みください。

http://www.npr.org/sections/health-shots/2016/02/08/465578231/when-men-get-breast-cancer-they-enter-a-world-of-pink