患者は知っている? それはどうだろうか。

ミケール・A・セケリス、ティモシー・D・ギリガン著

2017年3月1日

 貴方に秘密を打ち明けたい。

 貴方の腫瘍内科として、2つ、3つ、あるいは4つの異なる種の抗がん剤で貴方を治療したい。それぞれの抗がん剤はまたそれぞれ副作用があって、その中には死に至らしめるものもあるけれども。

 あるいはもしも我々が貴方の心臓外科だったなら、こう言うかもしれない。心臓弁を修復するので開胸手術をしなければと。そのため全身麻酔を受けなければならない。それで二度と目覚めることがないかもしれないけれども。

 医者としては、言うまでもないが目的は、貴方を救うことであって、貴方に害を及ぼすつもりはない。しかし実際には取り返しのつかない害を貴方に及ぼすこともある。稀にはあることだ。

 このように聞いてどう思うだろうか。潔く踏み切れるだろうか。

 実は、医療におけるインフォームド・コンセント(告知に基づく同意)は、一般的にあまりよく知られていない。それは、万が一結果が芳しくなく裁判に持ち込まれた時のため、弁護士の命によって我々が貴方に署名を求める書類である。残念ながら、それは貴方に情報を伝える目的のものではない。

 学校では、教師が生徒の理解度をテストや宿題で判断する。判断基準は、教師の足し算の説明方法ではなく、生徒の足し算能力である。我々が、貴方の理解度を試すには、テストするか、聞いたことを復唱してもらうかして、真の理解度を判断するだろう。ところが現実には、以下のような会話が展開される。

我々: (何か言っている。)

患者の貴方: (うなずきながら、一見注意深く聞いている様子。)

我々: 全部わかりましたか。

貴方: はい。

我々: 質問は?

貴方: ありません。

このように一種のなれ合いが起きており、皆共犯である。今までの人生で我々医者と対峙する過程で貴方には刷り込みが起きており、もしも貴方が何か理解できていなかったり、質問がたくさんあったりすると、我々医者がいらいらしていたり心配していそうに見えるのである。結局我々は多忙で他の患者も診なければならない。何ともけしからぬことか。

我々も貴方側、つまり患者の立場になったことがある。同僚が施した医療行為で、同僚が我々に適切に告知したと承認するように求められたことがある。適切な告知を受けたと承認したものの、受けていなかったと言って自分の医者をがっかりさせるのが怖かったのだ。

残念ながら、インフォームド・コンセントの茶番は医療研究においては悪化の一途をたどっている。がん薬剤の臨床実験に貴方が登録する前に、実験目的、計画、薬剤、その他の標準治療、起こり得る併発症が記述された25ページの文書が渡される。保険適用外か実験のスポンサーが補わない医療費は貴方持ちだということも。これも弁護士目的である。それで最後のページに署名をさせ、貴方の承認と実験参加への同意を得るのである。

そんな25ページの文書を最初から最後までしっかり読んだ経験がある人間なんているのだろうか。

 しかしながら読まなくても多分大丈夫だと高を括るってみよう。良からぬことが起こるかもしれないなんて聞きたくない人もいるのである。中には医者が一番よくわかっていると信じ込み、抗がん剤や心臓手術などの決断を任せてしまって安心する人もいる。がん治療の行程を少しでも楽にできるなら、我々が患者の心配を自分の仕事とし、舵を取ると、我々は患者に言うのである。

そして我々の推薦が良からぬ結果を招いたなら、その決断を後悔して嘆くばかりで何もしない。

患者の貴方がこれから行われる治療を完全に理解していると仮定するのは現実的ではないのである。開胸手術の経験や抗がん剤がどう貴方に影響するかなど、どうやって説明すればよいのか。我々も貴方も心臓手術やがん治療など経験したこともないのだから、そんな我々がする説明で十分だなんて、冗談としか思えない。

我々医師があなた方患者により良く告知ができるように協力してほしい。

– わかりやすい言葉や用語を使うように要求。医師が「単純な腸回腸導管」や「人工膀胱」などの用語を使ってきたら、「その用語の意味がわかりません。説明いただけますか。」と遠慮なく聞く。

– 聞いたことを要約して医師に聞かせる。こうすることで、我々医師の説明が下手で、患者の貴方に誤解を招いていたとしたら、正すことができる。例えば、「つまり、避妊ピルの半分を自分で服用して、彼に半分渡すということですね。」「違う、そうではなくて、自分で全部服用しなければならない。」

– 書面、写真かビデオを要求。人それぞれ学びのペースが違うので、得た情報のビジュアル化を使えば、家でじっくり情報を吸収でき、病院でちょっと医者の話を聞いたよりも役に立つ。

– 最良、最悪、最もありそうなシナリオを聞き、それぞれどの程度の可能性があるのか知る。

– 手術経験者、あるいは抗がん剤経験者と話ができないかたずねてみる。我々医師とは違う認識を持っているかもしれない。

– 代替医療の選択肢も探ってみる。それぞれの利点、不利点も学びながら。「私の病状で10人の専門家に診てもらったら、何人が先生と同じ治療を勧めるだろうか。」

– メモをとる。誰か診察の際に連れて行き、我々医者が伝えようとする情報を理解する手助けになるために、聞きにくい質問をしてもらったり、第二の脳として付き添ってもらう。

これまでたくさんの患者が、選択肢や起こりうる結果の理解を完全にせぬまま、後悔してきた。我々が推奨するのは、患者と同僚の医者たちが、医療に関する人生の一大決心をする上で、協力者になることである。

ミケール・A・セケリスはクリーヴランド・クリニックの白血病プログラム長。ティモシー・D・ギリガンはクリーヴランド・クリニックのセンター・フォー・エクセレンス・イン・ヘルスケア・コミュニケーションのコーチ長。

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この文章はボランティアにより翻訳されたものです。専門家の翻訳ではありませんので、腑に落ちないところがありましたら、下記の原文をご参照ください。

https://www.nytimes.com/2017/03/01/well/live/informed-patient-dont-bet-on-it.html?_r=1