平日さんぽ:味覚障害とミルクパワー

キモセラピー(抗がん剤治療)の副作用の一つに”味覚障害”がある。

事前知識はあったものの、なってみて分かるこの不思議で辛い感覚。

私の場合、軽い味覚障害が生じ始めたのは3回目のキモセラピーあたりだが、数日で治ったので、それ程、日常に支障はなかった。

だが、最後(6回目)のキモセラピーで遂に、キッター!!! 1週間を過ぎても治らない。その上、かなり重症ときている。

どう重症かと説明すると、まず、味が感じられないだけではなく、ある食べ物が異常に苦く、渋く感じるのだ。

ちなみに、温かい食べ物は全般的にアウト。ソーメンなども麺つゆがダメ。肉は信じがたい不味さと食感に耐えられず、きゅうりは苦瓜の如くである。

何とか嚥下出来るのが、ヨーグルト、味のないパン(バケットなど)、バター。そして、まだしも美味しく感じれるのが、なんと、”アイス・ガリガリ君”のみという有様である。

無味もキツイ。うま味を実感出来ないので、食の喜びがなく、ただ生命維持の為に食べるって感じである。だが、それはまだいい。

今、私が体験中の何でも、苦く、渋く感じるのは辛いのを通り越し、生命の危機を感じるレベルである。

何故なら、超渋柿を口に含んでしまった時を想像して頂けるといい。

ごえっ、まっずー」と言って、すぐに吐き出すであろう。そんな状態になる。その為、食物を嚥下出来ないのである。その上、渋みが舌に留まり、胃が収縮し、一気に食欲減退。当然、体力低下し、気力も落ちる。平日さんぽなんて気分には当然なれない。

何という、バッドサイクル。だから、抗がん剤治療って嫌われるのね〜〜、とつくづく実感するわけだが、ふと、一体、なぜ、抗がん剤治療で味覚障害が起こるのであろう?と興味を覚え、ちょっとリサーチしてみた。

どうやら、3つの要因が考えらえるらしい。

① 粘膜障害

② 味蕾障害

③ 神経障害

がんサポートサイト抜粋:

「抗がん剤による味覚障害は、口の中の粘膜へのダメージや、神経へのダメージなど、いくつかの要因で起こるといわれています。たとえば、5-FU系の抗がん剤では粘膜障害が起こりやすく、舌の表面にある味蕾が障害される可能性があります。タキソールなどのタキサン系、シスプラチンなどのプラチナ系、悪性リンパ腫に使われるオンコビン(一般名ビンクリスチン)などでは、神経を介した味覚障害になることがあると考えられます」
それ以外の抗がん剤の場合も、分裂の速い細胞がダメージを受けやすいため、3、4週間で生まれ替わる味蕾の味細胞そのものの感度が落ちる可能性があります。
また、味蕾の再生には、微量栄養素の『亜鉛』が必要ですが、抗がん剤によって亜鉛の吸収を妨げられるため、新しい細胞をつくりにくくします。」

http://gansupport.jp/article/measure/measure07/3450.html

上記3つのどれかが、抗がん剤により障害を受けると味覚障害が起こる。なるほどね〜、私の3つの機能のどれかが、6回という累積された抗がん剤でやられちゃたわけね〜〜。だが、一体、なぜ、”苦味”だけを感じるのだろう?

その答えがこちら。実に、興味深い回答に思わず唸ってしまった。

”生命を維持する上で最も危険な毒を感じ取る苦味の味覚だけが最後まで残るのではないか” と、推測されているらしい。

がんサポートサイト抜粋:

「何を食べても苦く感じる」のはなぜ?
苦味は毒見の味覚だから、他の味覚より感じやすい

「食物すべてが苦くて食べられない」「水やお湯ですら苦く感じる」という患者さんも多いもの。苦味を強く感じるのはなぜでしょうか。
「5つの基本味のうち、甘味は、砂糖や穀類に含まれるブドウ糖、塩味は塩化ナトリウム、旨味は肉や魚に多いイノシン酸やグルタミン酸で、栄養不足を感じたときに食べたい味覚です。一方、酸味は、その食物が腐っているかどうか、苦味は毒であるかどうかを見分ける味覚で、人間を危険から回避させるシグナルともいえます。とくに、一番感じやすいのが苦味です。他の味覚の感度がダウンしても、生命を維持する上でもっとも危険な毒を感じ取る苦味の味覚だけは最後まで残るのではないか、と推測できます」
http://gansupport.jp/article/measure/measure07/3453.html

いや〜、面白い、実に面白いではないですか、この肉体の神秘。私の意志とは全く無関係に一生懸命私の身体を護ろうとしてくれているんだなぁ。

だが、現実問題、全ての食物の苦味だけをキャッチされると、何にも食べられれなくなってしまい、それこそ生命維持出来なくなってしまうじゃないか。どうする?私の身体よ。

私は、自分の舌のある意味”有難迷惑”な防衛機能にうんざりしながら、深夜、冷蔵庫を探った。

日頃、お腹がゴロゴロするし、味も好きではない牛乳が目に入った。

ふと、”好きなものがこんなに不味いなら、嫌いなものはどうなるのだろう?”と思い、グラスに少し注いでみた。

口に含む。衝撃が走る。

「お、美味しい!!!」

甘くて、滋養に満ちていて、なんて旨いのだっ!!!

そこで、ハタと気付く。これはもしや、赤ちゃんと一緒?

ミルクだけを飲んで育つ新生児。もしや、赤ちゃんもミルク以外の食べ物は、不味い(苦い)と感じるのではないだろうか?

私の身体の生命維持装置は、今、新生児なみの状態なのかもしれない。

思わぬ発見(妄想)に興奮し、相方に話した。

「ねぇねぇ、今、私、赤ちゃんと同じ状態みたい。へへ、生まれ変わったのかなぁ。」

すると、相方は私の頭を撫でながら答えた。

「そうだね、頭も赤ちゃんみたいだもんね。」