リンパ系とリンパ浮腫

リンパ系はリンパ節を経由して体内組織から流体とタンパク分子を循環器組織に戻し、体の抵抗免疫の重要な働きをする。

消化器及び呼吸器システムの中の薄壁管またはリンパ節、脾臓、扁桃腺と拡散されたリンパ系組織のネットワークで構成されている。

がん手術の際にリンパ節が摘出された場合、患部の流体排水機能が低下することがありリンパ浮膿が発症する可能性がある。

リンパ浮膿とは患部を中心に長期的な痛み、気密性、感染リスクの増大、可動域の低下、そして洋服を着用することなど日常生活にも影響を及ぼす症状を含む。

筆者:ボブ・ヘッカー

がん治療としてリンパ節を切開した患者の約40%以上には第二リンパ浮腫が発生するというが、この永久的かつ多くの場合に衰弱性のある疾患をコントロールもしくはしれを防ぐことが2つの革命的な血管手術法によって可能になった。

がん手術後に体が正常に排液できるように特別な手術で流体排水経路を作り直し、その機能を復元させている。米国内ではこの手術が可能な病院は数少なく、オハイオ大学コンプレヘンシブキャンサーセンター、アーサー・G・ジェームズキャンサーホスピタルそしてリチャード・J・ソロブ研究所、そして他に幾つかの研究所のみとなる。

この2つの手術とは、リンパ系静脈吻合(LVA)またはリンパ系バイパスと言い、もう1つは血管リンパノード転送(VLNT)と名付けられ、OSUCCC-James病院が先鞭をつけた技術を使用している。「ガン手術の際に転移性であるかどうかを把握するためリンパノードがよく摘出されることがある」とロマン・スコラッキー医師兼オハイオ州がん再建美容外科大学教授はいう。

ストラッキー医師はOSUCCC(ジェームスセンターコントロールプログラム)のメンバーでもある。先進国では、二次性リンパ浮腫は通常の場合、がんの手術によるものが最も多い。

原発性または先天性リンパ浮腫は遺伝の欠陥によるもので一般的でなく、手術後のみならず他の時でも発症することが可能だ。

「世界中にリンパ浮腫の最も一般的な病因は寄生虫感染、蚊によって伝染されるフィラリア症と言われているが、先進国ではほとんど見ないことだ」とスコラッキー医師は語り。

病的肥満もリンパ浮腫の要因になると付け加えた。

「BMI(肥満度指数)が40~50以上の患者はリンパ系の重要な機能不全をおこすことがある」

米国ではリンパ浮腫の多くは特にリンパ節に移転することの多い、例えば乳癌,婦人科がん、泌尿器がん、メラノーマや他の皮膚がんなどの場合、その治療としてリンパ節が摘出されることが病因となるとストラッキー医師は説明した。

頭部や首部のリンパ節を摘出すると腫れることがあるが、重度は比較的に低いという。

また、スコラッキー医師は生検のために歩哨リンパ節を摘出することよりも、リンパ節や流域の完全摘出の場合にリンパ浮腫のリスクが高くなるという。リンパ節の完全摘出には様々な程度のリスクがあると言う。

「例えば、乳がん手術の際に腋窩からすべてのリンパ節が摘出され場合、手術した側の腕にリンパ浮腫が発症するリスクは40%になる」と言う。

下肢から表在リンパ節や深鼠径リンパ節の摘出はおそらく60%の確率でリンパ浮腫が発症するとのリスクが伴う。

最近までは、ほとんどの患者は着圧衣類を着用し、またはマッサージやフィジカルセラピーでしか腫れを抑えることができなかったが、ありがたくもLVAVLNT 手術の普及によってこの状態は変化しつつある。

「ミクロ脈菅形成手術の専門家であるスコラッキーのチームは、リンパ浮腫で苦しむ患者に希望と安心をもたらしている」とオハイオ大学整形学科主任ミカエル・ミラー大学教授・医師は評価した。

「リンパ浮腫の痛切な症状を和らげるこのミクロ脈菅形成手術ができる外科医は全国でも数少ない」

スコラッキー医師の他にOSUCCC-James病院ではデビット・カブリング医師そしてアルバートチャオ医師もLVA及びVLNTを行っている。OSUCCCの就任前は、2人ともテキサス大学アンダーソンキャンサーセンターでスコラッキー医師と一緒に働いたことがある。

LVAとVLNT

スコラッキー医師はLVAVLNYの違いを説明する:「LVAはリンパ節摘出によって混乱されたリンパ系と血流の間にある接合部分の再形成を試みる。超微細手術によってリンパ流路と血管の間に、浮腫で塞がれた域を迂回しリンパ液を運ぶ小型シャント(短路)を構成する。そうすることによって、液体を通常より多く運べるようになった血流へとリンパ液はが放出される。」という。

スコラッキー医師は2013年に「整形・再建手術ジャーナル」にLVA経験者100人が参加した研究を発表した。結果は「96%の患者に症状改善が見られ、この技術はすでに腕や手に初期リンパ浮腫のある患者には有効的だった」と記した。

重要なことに「リンパ浮腫が発生する可能性を最低限にするため、乳癌リスクの高い患者に対してこの手法を予防的に提供している」と付け加えた。

この医療処置を腫瘍摘出または乳房切断手術の際に使用することによって、リンパ浮腫のリスクを90%低下させることだできる。

将来的に泌尿器がんやと婦人科がんの患者に対して同じような予防策を行うことを検討している。」

蛍光性イメージ検査で患部のリンパ流路が機能していない場合、LVAを使用することはできない。

LVAが不可能な患者には、リンパ節が取り除かれたところに他所のリンパ節を移植する、新たなVLNT手術を行うことができるかもしれない。

「体の健康なところからリンパ節を取り、患部に移植しの血液供給に繋げる」

「そうすることによってリンパ節は自ら接続部分を生成してまた血管内皮細胞増殖因子(VEGF-C)を放出し、その周りにリンパ管の成長を促進する。

「ようするにこの手術は失われた部分を取り換え正常に機能するリンパ系を再現している。」と説明した。

スコラッキー医師によると、VLNTの1つのアプローチに関しては、OSUCCC―James所属外科医師らは間違いなく先駆者であるという。彼らは荻型の形をして腸に流れ込む血管を繋ぐ腸間膜といった組織からリンパ節の移植に成功した最初のチームである。

「腸間膜にはたくさんのリンパ節が埋め込まれている、そしてここからリンパ節の小さな細胞群を収穫するとリンパ浮腫を引き起こすことはない。以前は、他からリンパ節を移植した際に摘出される場所に浮腫を発症する恐れがあった。」という。

「そのため私達は腸間膜そして腹膜の網から(リンパ節を)収穫している。あらゆる合併症を起こす可能性を最低限にして、患者にとって最も良い選択肢だと思っている」という。OSUCCC―Jamesで超微細手術を行う外科医師が腸間膜を利用するこの手法を「基本的に発案した」とし、この手術が可能な場所はOSUCCC-JAMESのみだと付け加えた。

テクノロジー ブースト 

スコラッキー医師はLVAVNLTの出現は施術が進化するおかげだという。

2016年9月にスコラッキチームは「整形・再建手術ジャーナル」の記事で、超微細手術(マイクロサージェリー)に利用される機器の改善・開発が極マイクロサージェリー技術の開発に繋がっていることを説明した。

患者のリンパ系が活動している場合にLVAを利用する、そしてリンパ系の機能性を確認及び証明するには上・下肢遠位部遠位から胴までの直線流路を着色剤ではっきりするICGリンパグラフィーが使用される。

外科医は手術前に血管を特定した位置を患者の皮膚に描き、そしてICG 造影及びMRL(リンパ系の特別MRI検査)を使用し最も機能性の高いリンパ管を検出し、そしてそれを微小血管につなげている。

他にも重要な発展は、技術的に不可能だったバイパスを可能にした手術用顕微鏡技術の進展などある。

「未だにリンパ浮腫の最適な治療法は存在しない、しかし、このような研究によって(疾患の)病態生理や進行が明らかになるにつれて、このコンディションをよりよく理解し患者に良い選択肢を提供することができるようになる」と ローマンスコラッキー医師が現況を説明した。赤外線カメラを利用することによって手術前に外科医は皮膚を通してリンパ管や障害物の位置を確認することができる。

この機器はクリニックや手術室で使用可能になっているため、手術前にリンパ浮腫の進行状況や最善な手術方針を決めることができるという。

すべての患者にLVAが可能というわけではなく、また、リンパ浮腫のある患者全員にVLNTが使えるというわけでもない。「病的肥満患者に必要なのはまず減量することだが、不幸にも肥満手術のほかに確実に体重を減らす確実な方法はない」とストラッキー医師が言った。

「体重を落としてリンパ浮腫の後遺症で悩む患者には外科的選択肢がある。リンパ液の量が少なく重度の線維化がみられる後期リンパ浮腫の場合の患者が対象外となる。

リンパ浮腫による脂肪の過成長が腫れの主な病因であるという。

脂肪吸引術で脂肪層を取り除き肢を小さくすることが場合によって可能だが、リンパ液の問題に効果はないためまず最初にこれを対処しなければならない。

後期の患者

リンパ浮腫は皮膚にいぼ状などの象皮病症状を引き起こすことがあるという。「影響のある手足はとても大きくて醜くなる。包帯で包むことや圧迫することが難しく、皮膚に損傷や傷があることもある」

このような患者には、痛んだ皮膚を切除して筋肉の上に皮膚移植を行うオプションを提案している。

見た目に満足するような結果にはならないが、非常に衰弱した患者の生活の質がよくなる可能性がある。

このような例外を除いて、リンパ浮腫の患者のほとんどに対してマイクロサージェリー介入が可能だ。

使用の可能性が広がる

スコラッキーチームはLVA及びVLNTが広く利用可能になりつつあることをうれしく思っている。

「若手外科医はトレーニングを受け、全国各地にプログラムを始めている」という。

リンパ浮腫に対して個人的そして集学的な治療が必要だ。

外科、内科、イメージング、そして治療などいろいろな視点から考えなければならない。

OSUCCC-James病院ではこれらの要素すべてに対象できるチームがいるとスコラッキー医師がいう。同チームにはスティーブン・ディーン整骨・血管内科医、がんリハビリチームのチームリーダーカレン・ホック外科医などの公認リンパ浮腫セラピスト、また「リンパ浮腫に関してかなりの知識と経験をもつ」ダニエル・エイファーマン外科医などいる。

「こちらオハイオ州大学で行われている臨床試験など、全国各地にリンパ浮腫の研究が進んでいる」と付け加えた。

「体の修復能力に効果を与えリンパ系の傷害を治癒させる抗炎症薬の臨床試験などがある」と言うが、米国ではこの新薬は同臨床試験でしか入手不可能であると付け加えた。

「未だにリンパ浮腫の最適な治療法というものがない、しかしこの研究によって(疾患の)病態生理や進行が明らかになるにつれてこのコンディションをよりよく理解し患者には良い選択肢を提供することができるようになる」

スコラッキー医師が言うには、医師とその患者にとってこれは励みになることだという。

「治療方法が増え、そして、リサーチの段階からすぐさま(新薬や治療が)利用可能になることがあり、今現在は5~10年前に比べていろいろなことが明らかになってきた。また、患者はリンパ浮腫の治療を行うチームへのアクセスもしやすくなっている」という。

これらのオプションが可能2,3カ所だけでなく、患者の近くに治療が受けられるようになっている。

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https://cancer.osu.edu/~/media/Files/Cancer/About/Publications/Frontiers/2017/Winter-2017-Frontiers.pdf?la=en 18ページ